広島さん。

某カープ好きグループにてだらだら書きました。

その十五。

僕の同級生、広島さんはとなりのクラスの人気者。
だけど僕にだけよく分からない事をいいにくるのが玉に瑕。

(ジュンテンドゥにキャットフードを買いに来た湯川くんの背中に例の黄色い、いや赤い声)

『湯川くーん!!』
『あ、奇遇だね。ペットフードを買いに来たんだよ』
スイミー?』
『ごめん、鯉じゃなくて、ネコなんだ。広島さんこそ、何か買い物に?』
『うん!うち、この前カセットコンロが壊れて、新しいの買いに来たの!』

(二人に向かってこれまた大きい声)

『リコぉっ!!男子をスカウトしてるのかなぁ!』

(広島さんによく似た顔立ちの年上の女性が近付いてくる)

『(ドギマギしながら)誰?お姉さん??』
『お母さんだよ』
『!!(どう見ても二十代後半なんですけど)』
『お母さん、紹介するね!隣のクラスの湯川くん』
『はは、はじめまして』
『こちらこそ。リコの母の広島もみじです』
『ども』
『好きな選手は誰がなんといっても前田さんよ!』
『そ、そうすか・・・』
『湯川くん、私もリコも機械とインハイには弱いから、よかったら買い物付き合ってくれない?』
『お母さん!湯川くんは飼料を買いに来ただけなの!』
『飼料はやめて、広島さん。わかりました』

(売り場で)

『(困惑している母)どれもこれも、おんなじに見えるわねぇ。セ・リーグの2位以下のチームみたい』
『いろんな人に怒られそうですね』
『何が?』
『いえ。こういうときは、一番売れてるものが間違いないんじゃないですか?』
『一番?』
『はい。一番売れてる』
『(湯川くんの口をふさぐ広島さん)それ以上はダメ!』
『一番、売れた・・・一番、智徳さん・・・誠也・・・とられた、一番・・・いやぁあっっっ!!(暴れ出すお母さん)』
『やめて、お母さん!!』
『えぇぇぇぇっ!?』

それからの事はよく覚えていない。

覚えているのは広島さんのお母さんを必死に抱き留めて押さえていた事と、広島さんが細長い砂袋をお母さんの首にヒットさせた事と、救急車のサイレンだけだ。

後日、広島さんのお母さんからお詫びのメールが届いた。

『とりみだしてごめんなさいね、湯川くん。あの時あなたが私を押さえてくれてなかったら、大変な事になるところでした。「落ち着いて下さい、お母さん!!」っていう言葉、大人が云われる言葉じゃないわね。でもね、湯川くん。キミに「お母さん」って呼ばれるのはまだ早いんじゃない? 広島もみじ』

僕の同級生、広島さんはとなりのクラスの人気者。
だけど僕にだけよく分からない事をいいにくるのが玉に瑕。

広島さんのお母さんをお母さんって云うのが何が早いんだろう?