その三十二(広島さん『野球だ野球だ!カープ関係ないじゃんいい加減にしろよと思ってる方、ちょっと歌とか歌いました勘弁してください今日も長いよ』スペシャル その4)
僕の同級生、広島さんはとなりのクラスの人気者。
だけど僕にだけよく分からない事をいいにくるのが玉に瑕。
僕らの草野球は6回に動いた。
鷹一、山梨先輩の連打で生まれた重い1点。
あと、1回しかない・・・!
なのに、チームのみんなは笑っていた。
なんで!?次ダメならこの試合は!!
『いやー、福岡の馬鹿オヤジの申し出受けといて良かったなぁ!これも仏のお導きだぜ!(ニヤニヤしながら柳さん)』
『倅のスタミナ考えないで、お披露目を長くしたくて、「9回までやろう」って!銭儲けは得意なんだろうけど、野球はバカだね(2回に福岡父に死球をぶつけたよし子さん)』
・・・?
『(おずおずと湯川くん)あの、今日。7回までなんでしょ!?』
全員が湯川くんを見る。
『どうしたんだい、そんな眼を真っ赤にして(心配そうな三条さん』
『次で、おわり、なんでしょ?(泣きそうな湯川くん)』
静まり返るベンチ。
『今日、9回までだよ(不思議そうな顔の広島さん)』
『え』
『(キョトンとした顔の鈴木さん)坊ちゃん、あんたルーさんから、その辺の事ァ聞いてらっしゃらない?』
『・・・はい』
次の瞬間、ルーリーさんは(痣が残らないように)バッティンググローブをはめたチームメートのみんな(と、金属バットを持った広島さん)から袋叩きに合っていた・・・。
チームの亀裂(笑)はさておき。
まだ3回あるんだ!
いけるかどうかはわからないけど!
まだ3回あるんだ!
最終回だと思っていた7回表。
広島ループの打順は4番・ルーリーさん。
チーム全員が先頭打者だという事を忘れてボコったことを後悔していた・・・。
『(満面の笑みのルーリーさん)大丈夫!これぐらい、ウチのもみじの本気に比べりゃ・・・(ケホケホ)それに、福岡の倅もみんなの努力で相当疲れてるはずだ。・・・父さん、ここまでどうです?』
『(スコアブックを見る広島さんのお爺ちゃん、鯉太郎さん)6回まで121球・・・どうせリリーフなんか用意してないだろう、正義君(鷹一の父親)は。柳君、寺内君がとにかく粘って削りまくってくれたおかげだ・・・そろそろ狩り時だね(悪魔的な笑い)』
『よしよし!(笑顔のルーリーさん)』
『とはいえな、オレの可愛い息子よ(首を振りながらため息)』
『なんです、父さん』
『お前はここまで全部、三球で終わってるんだ。一体これはどういう事なんだい?』
『・・・』
『ヒーローは必ず現れるだよね、お父さん!(大きな声で広島さん)』
『ん、お、おおぅ!!』
『どうだか・・・(ため息の鯉太郎さん)』
父・鯉太郎さんと軽く打ち合わせしてベンチを出て。
『いけます?ルーリーさん(微笑みながら聞く三条さん)』
『うん、大丈夫。みんな、打ってくるから(無表情に)』
の一言を残して打席に向かうルーリーさん。
マンガに出てくる葉っぱをくわえた人みたいにバットを振り回しつつ、叫びつつ。
そして、打席前で訳の分からない事を叫びながら鬼のようにバットを振る、ルーリーさん。
ヤケクソになってるようにも見えるけど。
違うんだな、これが。
『(ニコニコしながら三条さん)スイッチ、入ったね』
『(眉をしかめながら四郎さん)いつもより遅いけどな』
スイッチの入ったルーリーさん。
ベンチのみんなは、そんなルーリーさんを、ガキ大将の子分みたいな目でニコニコしながら見ていた。
スゴイね。
僕ら、負けてるんだよ(笑)?
やがて。よし子さんが。
『勝ちにぃ~、行くのぉが、選ばれたもののさだめぇ』
大きな声でサントスさんが。
『イットウ、イチダガ、ショウブノスベテェ~!!』
それを受けてちょっと演歌調で盛り上がる鈴木さんwithコーラスの四人。
『とぉしぃをつぅくぅしぃ(よいよいよい!!←柳さんと寺内さん)、とぉしぃをつぅくぅしぃ(よいよいよい!!←四郎さんと三条さん)』
そしてソロ。
『(おおきなこえで、広島さん)今ここで、花と、咲けよぉっ!!』
『(全員で)ループ、ループ、ループ広島、ひっろしまぁるぅ~ぷぅっっ!!』
歌い終わったその瞬間。
キーンッッ!!!
鋭い金属音と、僕らの叫び声が重なる。
広島ルーリーカープ、ようやく上がった反撃の狼煙は。
我らがボス、広島ルーリーさんの、ライト側、客席を楽々超える、場外ホームランだった。
僕の同級生、広島さんはとなりのクラスの人気者。
だけど僕にだけよく分からない事をいいにくるのが玉に瑕。
・・・よし、同点!