広島さん。

某カープ好きグループにてだらだら書きました。

その三十三(広島さん『野球だ野球だ!カープ関係ないじゃんいい加減にしろよと思ってる方、今日で終わると思ったけど明日、ようやくカープが絡みます今日も長いよ』スペシャル その5)

僕の同級生、広島さんはとなりのクラスの人気者。
だけど僕にだけよく分からない事をいいにくるのが玉に瑕。

6回裏に先取点を取られた僕らだったが、すぐさま7回表にルーリーさんのソロで同点に追いつく。
そして後続のサントスさんがスタンディング・ダブル!!

押せ押せなのだが。

その後に出た僕がサードゴロ。
四郎さんがショートフライ。
鈴木さん、粘ったけど三振。

結局同点どまりだった・・・。

とはいえチームの雰囲気は明るいわけで。

『振り出し振り出し!面白くなってきたねぇ(寺内さん)』
『アト、イッカイ、マワッテキタラ、ボクガキョウノヒーローネ(サントスさん)』
『お前、毎回それなw(ニヤニヤしながら柳さん)』

勝ち負けじゃなくって。
ホントに野球が好きなんだな、この人たち。

とはいえ、僕の方には勝たなきゃいけない理由があるわけで(覚えてますか、皆さん?)。

その後の7回裏、8回裏表はいずれも三者凡退。

すごいよ、よし子さんも、鷹一も。

『あの福岡の倅、自分に一発喰らった後、明らかにギアが上がりましたね(感心しているルーリーさん)』
『大したもんだよ。ただ、まだ自分のアタマで投げるほどには賢くないようだね。先輩のリードに忠実に投げている(データを眺めながらコメントする鯉太郎さん)』
『お祖父ちゃん、それっていけない事なの?』
『リコ。メジャーには「100万ドルの肩と50セントの脳ミソ」っていう言葉があるんだ。どんなにいい球を投げられても、配球、自分と周りの守備、対戦相手のデータ。そんな諸々を自分なりに消化して、自分の頭で考えてピッチングに活かせない奴は、決して勝ち続けることはできないのさ』
『ふーん(100パー理解できていない広島さん)』
『これまでのあの子の投球を見るに、多分あの子はオヤジさんからウチのデータをもらってない、もしくは聞かなかったんだろうね、不幸な事に。準備を怠るものにはどういう結果が待っているか?ひとつあの子に教えてやろうじゃないか』

試合はいよいよ9回表。

打順はクリーンアップからで、三条さん。

打席で小さい声で歌ってるんだけど、これがさ!

『短く持って短く持って~、ボールをよく見てぇ~、ジャストミートージャストミートー、センター返しのバッティング!』

少年野球の歌じゃん!!
でも、これが三条さんの「入ってる」状態らしく。

歌の通りのセンター前ヒット!

『いやぁ、何とかしたけど、あと宜しくねぇ(三条さん)』

続いては、先ほど同点ホームランを放ったルーリーさん。

『さぁ、ここからだよ、湯川くん(ニヤニヤしながら鯉太郎さん)』
『そうですね。鷹一は、全く知らないんですもんね』

鷹一は、セットポジション
そして、ルーリーさんへの第一球は、外角のストレート!

と、その一瞬前に。
三条さんは猛烈な勢いで二塁へダッシュ

無警戒のバッテリーだったが、さすがは「山梨砲」と呼ばれる鉄砲肩の山梨先輩。

ギリギリのクロスプレイは・・・。

『セーフッ!!』
ノーアウト、二塁!!

『やっぱすごいよ、三条さん!広島さんもそう思うだろ?』
『うーん、ずっと見てたから、よく分かんない』
『あ、そう』
『(ニヤニヤしながら鯉太郎さん)正平、今まで走らんかったからねぇ。あの図体でファースト。そりゃデータが無ければ警戒もゆるくなるわな。正平の武器は、あの足でもあるんだから』
『あの、鯉太郎さん』
『何だい、湯川くん』
『何でそんな打てて走れる人が、外野に行かないんです?』
『それは、あいつがファースト大好きで、それ以外のポジションを守る位なら野球なんてしない奴だからだよ』
『・・・』

まさかの三条さんの盗塁に動揺したのもあるのか、次のルーリーさんは敬遠で、ランナー一、二塁。
ここで打席は、『ドミニカじゃないよブラジルだよ』のサントスさん。

『ルーサン、ケイエンデ、ボクトショウブカ。ヤッテヤルヨ!』
『お願いしますね、サントスさん!ここで決めましょ!』
『(ニッコリ笑って)オーケイ、ユカワ・・・コイタロウサン、サクセンドオリデスヨ、ネ?』
『そうだよ、サントス。あいつらの度肝を抜いてやるんだ(悪魔的な笑いの鯉太郎さん)』
『こわいよ、じいさん・・・(若干引き気味のよし子さん)』

6番打者の自分としては。
ここで決めて!
僕に打順が来ないで!!
本当にそう思ってたのだが。

サントスさん、ここでまさかの送りバント!!

ランナー、二、三塁って。

次、僕じゃないか!!

『なんでヒッティングじゃないんです、サントスさん!?』
『ユカワ、ボクラ、ミンナデ、キメテタンダ。ルーキーニ、サイコウノプレゼントヲ、オクロウッテネ』
『サントスさん・・・』
『タノシンデキテ!』

いやいやいや。
楽しめないって。

とはいえやるしかない。
実は、こんな事もあろうかと特訓はしてきた。
鷹一に通じるかどうか?

鷹一たちはいったんタイムをとり、打ち合わせ。

『(山梨先輩)湯川はたぶん、決まればラッキーなスクイズだろ。ここは確実に止めて、問題はその後のキャッチャーのオッサンだな。ここは歩かせてもいい。その後のピッチャーのおばさんで仕留める。いいな、鷹一?』
『はい』

試合再開。

僕はバントの構え。
教えられたとおりに。

鷹一がちょっと大きく見えるけど、気のせいだろう。
振りかぶって、第一球。

インコース高めのストレート。

来た!!

教えられたとおりに。
僕はバントからヒッティングに切り替え。

キーンッッ!!!

僕の打球は、スクイズ警戒の守備を抜いて、レフト前に。
そしてエンドランの指示を鯉太郎さんから受けていた三条さんは楽々とホームへ。

逆転!!

二塁スタートのルーリーさんは。
何か訳の分からないことを叫びながら走っていたけど、本塁ヘッスラが決まった。

二点目!

この試合、初めて立つ塁上。
こんな眺めだったっけ?
若干混乱した思いで、僕はルーリーさんとよし子さん、三条さんを中心にしたコーチ陣から受けた特訓を想い出していた。

『この試合では使わないかも知れないが、君にはバスターの練習をしてもらう。ただでさえデータの少ない選手がバスターを仕掛けてくるって云うのは、草野球レベルではちょっとした恐怖だからね(笑)。それに、対戦相手の福岡くんは、せいぜい君のことを補欠選手だったな、としか記憶していないだろう。ここが僕たちの付け目だ。あの子は、僕らと一緒に練習した君を知らない。これは、大いに付け入る隙があるって事だ』

普通にやってても、そんじょそこらの草野球チームじゃ相手にならないはずなのに。
手を抜かないんだよねぇ、広島ループ。

なんとか搾り取った2点。

しかし残念な事に後続の四郎さん、鈴木さんが凡退して。
いよいよ、9回裏。
これをしのげば・・・!

と、ベンチでは魚広さん夫婦が打ち合わせ中。

『よし子、大丈夫か?』
『いけるよ、あと3人だろ?』
『お前がそういう時が一番危ないんだ』
『・・・だめだよ。「先発完投、翌日死体」がアタシのモットーなんだ。大体さ、このチームで誰がアタシの後に投げられるんだい?』
『・・・わかった。だけど、オレの判断はルーリーさんと鯉太郎さんには伝えておく』
『腐れ亭主』
『女房役はつらいな(笑)』

僕の同級生、広島さんはとなりのクラスの人気者。
だけど僕にだけよく分からない事をいいにくるのが玉に瑕。

よし子さんもかなりきている。
打順は、鷹一、山梨先輩、正義さんのクリーンアップ。

まだ気は抜けない・・・。