その三十八。

僕の同級生、広島さんは隣のクラスの人気者。
だけど、僕にだけ訳の分からない事をいいに来るのが玉に瑕。

『ねぇ、湯川くん！』
『何、広島さん？』
『宮崎は今年も熱いね！』
『そうだね。チームの強い点、弱い点を洗い出しつつ、開幕に向けていい感じでまとまってほしいね』
『黒いヘルメット、似合わないね！』
『・・・あっちの宮崎キャンプなんだ。広島さん、カープの方じゃないの？』
『そっちはちゃんとチェックしてるよ！ドラ６の正随さんが「田中誠也選手からレギュラーを」って云ってたり、長野さんが主力級のピッチャーから全然打てなかったり』
『相変わらずのネタの拾い方だね』
『でも、どきどきするよね！今年優勝すれば四連覇だよ！！』
『キャンプとオープン戦までは、すべての球団のファンが優勝を夢見られる。ある意味夢のような時間だよね』
『どきどきキャンプ！！』
『ジャック・バウアーは出てこないよ』
『ホントに、キャンプインとベッドインはドキドキものだね！！』
『（若干たじろぐが）・・・広島さん、ベッドインって言葉、意味は分かってる？』
『知らないよ！』
『だよね・・・大変だよ、広島さん！』
『何？』
『ベッドインって云う言葉を意味も分からず使う女の子は、その言葉を口にした三日後に熱狂的なクリケットのファンになって野球の事なんか忘れて、自分ちの衛星アンテナとチューナーを細工してインドのTVで中継してるクリケットの試合を寝食を忘れて観るようになってしまうんだ』
『えぇぇ！！どうしよう！！』
『大丈夫だよ、呪いを解く方法があるよ』
『どうしたらいいのぉ！（涙目）』
『お父さんとお母さんの前で、「ベッドインってどういう意味？」って聞くんだ。それで全て呪いは解けるよ』
『わかった！やってみる！！』

僕の同級生、広島さんは隣のクラスの人気者。
だけど、僕にだけ訳の分からない事をいいに来るのが玉に瑕。

たぶんお母さんにぶたれるだろうけど、まぁいいや。
彼女にはいい勉強だし。
最近はようやく広島さんの操縦法も覚えてきたみたいだな。