その三十九。

僕の同級生、広島さんは隣のクラスの人気者。
だけど、僕にだけ訳の分からない事をいいに来るのが玉に瑕。

『ねぇ、湯川くん！』
『何、広島さん？』
『日南の一次キャンプが終わったね！』
『１５日からの沖縄に向けて、いよいよ盛り上がるね』
『佐々岡コーチのMVPは、床田さんと加藤さんだって！』
『コーチが間違えるのは仕方ないけど、加藤じゃなくって、矢崎だよ』
『床田さんも間違えてたよ！』
『せめてファンは間違えないようにしようね』
『あとね、湯川くん！』
『何、広島さん』
『はい、これ！！』

（隣のクラスなのに堂々とチョコを湯川くんに差し出す広島さん）

『（若干動揺しつつ）あ、有り難う、直球だね・・・』
『強気は最大の味方っ！』
『津田さんの反対語を云ってるつもりだろうけど、反対語はないよ』
『チョコあげるの、湯川くんだけだよ！』
『僕だけって事は』
『あとはお父さんでしょ、おじいちゃんでしょ、ルーリーカープのみんなでしょ』
『・・・この学年では、って事だね』
『もちろんだよ！』
『ある意味ホッとしたよ。けど、意外と多いんだね、大出費じゃない？』
『ホワイトデーで三倍にしてもらってるから大丈夫！』
『サラリとひどいプレッシャーだね』
『だから学校では、カープの話が出来る男の子のお友達しかあげないよ！』
『じゃ、学年どころか、学校で、僕、だけ？』
『うん！（と、気がついて）いっけない！あと、白井審判さんと稲葉さん（サムライJAPAN監督）とスライリーにも渡しに行かないと！じゃあねぇっっ！！』

（走り去る広島さん）

僕の同級生、広島さんは隣のクラスの人気者。
だけど、僕にだけ訳の分からない事をいいに来るのが玉に瑕。

後半、女子高生の交際範囲じゃなかった気がするけど、まぁいいや。

 そうか、僕だけか。
なんだろう、にやけちゃうな。

んふふ。

（と、背後から何か痛い視線を感じる）

『ん？（振り向いて）・・・あぁっ！！』

（湯川くんの背後には嫉妬の炎に燃えた福岡鷹一）

『ちくしょう・・・湯川、次は絶対打たせねぇ！！』

よりにもよって、最悪のタイミングだなぁ。
あいつ、今シーズンも僕の出る試合は可能な限り出場するらしいし・・・

自主トレはルーリーカープのみんなとやってるけど、まだまだレベルアップしないと。


（次回、広島さん『草野球なのにキャンプイン！？』spに続く・・・かも？）