広島さん。

某カープ好きグループにてだらだら書きました。

その四十一。(広島さん、いよいよ草野球チームも始動!スペシャルその2)

僕の同級生、広島さんは隣のクラスの人気者。
だけど、僕にだけ訳の分からない事をいいに来るのが玉に瑕。

 

前回の続きです。
入団志望の新人選手であり、僕の先輩でもある岡本さん。
あわててやって来たループナインの前で、信じられない事を繰り広げていた。

『おいおい~っ!!上手いよ、リコちゃん、ほいっ!!』

『ふんっ!有り難うございますぅ、ほいっ!!』

その光景に僕も含め、全員が固まっていた。

『おい、息子や。あれは現実なのかね?』
『父さん、嬉しくも恐ろしい事に事実ですね』
『ひ、広島さんが・・・キャッチボールしてるぅ!!(絶叫する湯川くん)』

(声に気付いた広島さんと岡本くん)

『あ、みんなぁ!!待ってたよぉ!!岡本さん、アップ完了だよぉ!!』
『よろしくお願いしますっっ!!』

(わらわらと近付くループナイン)

『初めまして。監督の広島鯉太郎です』
『しぁっすっ!!岡本鉄次といいます!身長178cm、体重77kg、左投げ左打ちです!好きな球団は広島東洋カープ。今は鈴木誠也の大ファンです!!そして、二番目は広島ルーリーカープです!!』
『言い放ったねぇ(嬉しそうなルーリーさん)』
『はいっ!!ここの野球が面白くて入団テストを受けに来ました!どこでもやります、なんでもやります!お願いしますっっ!!』
『(髪型を見て)・・・野球部かい?(ニコニコしながら三条さん)』
『はい!でも部活は部活、趣味は趣味です三条選手!!』
『選手はやめようよ(苦笑)』
『いえ!ビデオでしか見てませんけど、打てて走れて。すげぇカッコよかったっす!!』
『ビデオ?』
『後輩に借りました!(湯川くんを指さす)』
『へぇ、試合のビデオなんか撮ってたの?(ニヤニヤしながらよしこさん)』
『(どぎまぎしながら)そ、そりゃ撮りますよ!久々の試合だったんだもの』
『湯川くん、自分のお父さんにお願いしたんだよ!(しれっと広島さん)』
『ひ、ひろしまさん!!』
『とにかく!ここで野球やりたいっす!!お願いしますっ!!』

ループナインに坊主頭を深々と垂れる岡本先輩。
思わず僕も。

『僕からもお願いしますっっ!!(一緒に並んで脱帽、頭を垂れる湯川くん)』
『ゆーちゃん・・・!?(驚く鈴木さん)』
『先輩、自分の何百倍も野球上手いんです!!お願いします!!』
『まぁまぁ、頭をあげて、二人とも・・・岡本くん、だね?(好々爺の鯉太郎さん)』
『はい、お願いしますっ!!』
『(苦笑しつつ)出身校は?』
『はい!!』

先輩の口から出てきた校名に、全員が驚く。

『あそこの、岡本くん?(驚いているルーリーさん)』
『はい!!』
『どこかで聞いた名前だと思ってたけど・・・。湯川くん、とんでもない事をしちゃったな!!(嬉しそうなルーリーさん)』
『はい、ルーリーさん。自分の自慢の先輩です!!』

ループナインが驚くのも無理はない。
県下有数の強豪校在籍、この秋季大会で四番を打ってた選手が目の前にいたのだから。

『こりゃぁすごい補強になるぞぉ!(柳さん)』
『ポジションはどこなの?(寺内さん)』
『センターでしたけど、どこでもやります、なんでもやります!!』
『捕手以外だな(ニヤニヤしながら四郎さん)』
『水沼捕手にはかないません、でも、教えてくれたらやります!!』
『いい根性だなぁ(微笑む四郎さん)』
『とにかく、使って下さい、野手ならどこでもいいです!!』
『ってかそれよりもむしろ・・・ですよね、先輩!!(イジワルな顔の湯川くん)』
『いや、それはおいおいだよ・・・』
『なにがおいおいなんだね?』
『いや、それは、鯉太郎さん・・・(柄にもなく口ごもる)』
『岡本くん!!』
『は、はい!!』
『君はいま二つミスを犯した。重大なミスだ』
『・・・』
『まずひとつめは、われわれループナインの間では秘密はない。だから、君が入団希望というなら、野球に関してはすべて正直であってほしい』
『はい』
『そしてもう一つは、私を「鯉太郎さん」と呼んだ事だ』
『・・・へ?』
『今からは監督と呼びたまえ、岡本鉄次くん』
『じゃあ!』
『テストなんか要らんよ。広島ルーリーカープへようこそ』
『・・・あ、有り難うございます!!』
『先輩、おめでとうございますぅぅっ!!(先輩に抱きつく湯川くん)』
『ば、バカ!やめろって!』
『また先輩と野球出来るんですねぇ(涙ぐみながらハグする湯川くん)』
『やめろって!!』
『せんぱぁーいっ!!』

(二人のじゃれ合っている姿を見ているループナイン)

『げへへへっ、なんかBLっぽくない、リコちゃん?(下品なよし子さん)』
『何言ってんの、よし子さん。二人ともボーイズリーグじゃないよ?』
『あ・・・そぅだねぇ・・・』
『お前みたいに薄汚れてないんだよ、リコちゃんは(笑いをこらえる四郎さん)』
『うっさい、クサレ亭主!!』

『しかし・・・リコにキャッチボールを仕込んだだけでも非凡な野球センスがあると思いませんか、父さん?』
『そうだな、ルーリー。リコは運動神経はかなり良い方だが、なぜか野球だけが出来ないという特異体質。それをこの短時間で・・・』
『選手としては勿論ですが、我々のコーチとしても期待出来るんでは?』
『うん、楽しみだね。正平くん』

『ボク、マケナイヨ!』
『サントスはそのままでいいんじゃない?』
『おれもそう思うぜ。センスとパワーでカチ込むブラジリアンスタイルでいいんじゃない?』
『デモネ、テラサン、ジュンシンサン。モット、ウマクナルナラ、テツジノコーチングハキクヨ!!』
『殊勝だねぇ』
『おま、日本人じゃないの、ホントは?』

久々の大型新人入団に沸き立つナインだったけど。

『それよりも、父さん』
『うん』
『岡本くんと湯川くん最後のセリフが気にかかりませんか?』
『野手ならどこでもいい、いや先輩はむしろ・・・か』
『・・・となると、ですよ』
『たぶん、そうだね』
『面白くなりますよ、こりゃあ』
『ワクワクするなぁ、倅よ』

(目を合わせてニヤニヤする広島シニア&ジュニア)

僕の同級生、広島さんは隣のクラスの人気者。
だけど、僕にだけ訳の分からない事をいいに来るのが玉に瑕。

この後の岡本先輩の起用は、ループ、そして僕に驚くような変化を及ぼす事になるのだけど・・・。

『せんぱぁーいっ!!』

嬉しくてハグを続けている今の僕には、想像も出来なかったわけで。

『なんか湯川くん、先輩ばっかり!』
『そりゃそうよ、リコちゃん。憧れの先輩とまた野球出来るんだもの。アタシだってああなっちゃうかもねぇ』
『・・・あたしは、ならないっ!(少しむっとした顔)』
『あららら・・・そうですかぁ・・・(小声で)こりゃ湯川くん、気をつけないと』
『何、よし子さん!?』
『いえいえ、何でもぉ・・・』

『せぇんぱぁーいっ、せぇんぱぁーいっ!!!』