その五十七。
僕の同級生、広島さんは隣のクラスの人気者。
だけど、僕にだけ訳の分からない事をいいに来るのが玉に瑕。
『ねぇ、湯川くん!!』
『何、広島さん』
『前回のお話しで、堂林さんを忘れないでって云われたよ!!』
『・・・忘れてたの?』
『・・・湯川くんは?』
『んーっとねぇ(かゆくもない頭をかく湯川くん)・・・広島さんは?』
『んーっとねぇ・・・ふふっ(ごまかし笑いの広島さん)』
(そこに、人殺しの顔になっている岩国さん登場)
『リコ、湯川くん!!なんで堂林さんを忘れてたのよ!!』
『忘れてるわけじゃないよ、由宇ちゃん!!』
『そうさ。誤解だよ、岩国さん!!』
『じゃあなんで堂林さんに触れなかったの、リコ、湯川くん?』
(岩国さんから目線を外して口笛をふく二人)
『・・・もういいよ。でもさぁ、なんで堂林さん、波にのれないんだろう』
『八年目だし、もうそろそろ期待に応えてほしいけどね。一体何なんだろうね?』
(ため息をつく岩国さんと湯川くん)
『由宇ちゃん、湯川くん・・・上手く云えないんだけど』
『何?広島さん』
『堂林さんがのれないのって』
『うん』
『背番号が重たいせいじゃないかな?』
『なんでよ、リコ?ノムケンからもらった宝物だよ!?』
『それが、いけないんじゃないかな、と、思うんだ』
『そんなわけないじゃない!!』
『でも・・・なんか分かる気がするね』
『湯川くんまで!?一体ふたりとも』
『まぁ聞いてよ。いま岩国さんも云ったよね、ノムケンからの宝物って?』
『だって、そうじゃない!』
『ってことは、あの背番号は、いまだに野村謙二郎のものなんだよ』
『・・・』
『だから、その背番号にふさわしい活躍を!』
『プロは、背番号のために野球をするのかな?』
『・・・』
『期待されない事は悲しいけれども、期待を受けるのが必ずしもプラスになるわけじゃないって、僕は思うんだ』
『・・・なるほどね。ちょっとわかるな』
『トレードなんて云う人もいるけど、まだまだ可能性はある人だと思うんだよね』
『もうちょっと、長い目で見てあげないといけないね』
『そうだね。もうまったく期待しないから、くらいに観てるとブレイクするかも』
『うわー、できるかなぁ(もう皆さんお分かりでしょうが堂林ファンの岩国さん)』
『あと、広島さんの云うとおり、背番号が重たいんなら、思いきって替えちゃうのは面白いかもね』
『そうね!何番がいいかなぁ・・・「77」とか?』
『ノムケン越えだね』
『だったらさ、もっと思いきって、『777』にしちゃえばいいんじゃないかな!!(大きな声でご提案の広島さん)』
『リコ・・・』
『広島さん・・・』
『ん?どうしたの、二人とも!!(われながらグッドアイディアな広島さん)』
『んー、どうでしょー(困った顔でモノマネをする湯川くんと岩国さん)』
僕の同級生、広島さんは隣のクラスの人気者。
だけど、僕にだけ訳の分からない事をいいに来るのが玉に瑕。
777って。
それ、シスタージャビット(もしくはシャオロン)の背番号なんだけど・・・。