その七十二。
僕の同級生、広島さんは隣のクラスの人気者。
だけど、僕にだけ訳の分からない事をいいに来るのが玉に瑕。
『ねぇ、湯川くん!!』
『何、広島さん』
『私ね、色々考えたんだけど・・・(ニヤニヤしながら)』
『うん』
『カープファン、やめようと思うんだよ!!(ニヤニヤしながら)』
『理由は??』
『べつに!なんかイヤになっちゃった!!(ニヤニヤしながら)』
『・・・そうなんだ(あぁ、と全て理解する)。偶然だね、広島さん』
『何が??』
『実は僕もカープファンをやめようかなぁ、って悩んでたから』
『えぇっ!!なんで、なんでなの!?』
『実はこのところずーっとレオとライナから「一緒にライオンズ応援しようよ!!」って誘われててね』
『ええええぇぇぇっ!!(腹の底から驚いている広島さん)』
『それだけじゃないよ、マー君だろ、ジャビットに、ドアラ・・・』
『そんなにいろんな所から誘われてるのぉっ!?』
『あと、こないだはフィリー・ファナティックからも』
『め、メジャーからもオファーが!?(オファーの意味が違ってる広島さん)』
『今まで広島さんと一緒にカープを応援してきたけど・・・広島さんがカープファンをやめるんなら、僕もふんぎりがついたよ、有り難う』
『えぇっ、そんな、そんなこと・・・ウソだよね、ウソでしょ!!湯川くん!?(涙目になっている広島さん)』
『もちろん!!ウソだよーんっ!!!』
『・・・もぉぉっ、ひどいよおぉ!!(すっかり騙されて涙目)』
『チョロすぎるよ、広島さん』
『もぉ、絶対許さないよ!!(ほっぺをふくらます広島さん)』
『ごめん、許してっw』
『なんでニヤニヤしてるの、絶対許さないよっ!!!』
何ともたわいの無い広島さんとのやりとり。
大変なご時世だけど。
大変なご時世だから、たわいも無いやりとりを忘れたくないもんだ。
球春はまだまだ遠いけど。
冬来たりなば、春遠からじ。
プロ野球が。
明日から消えて無くなっても、世界はちっとも困らない。
でも、もし。
プロ野球が。
明日から消えて無くなったら、世界はつまらないものになってしまう。
もちろん、これは僕にとっての事。
ある人にとっては、それがJリーグだったり、宝塚歌劇だったり、ディズニーランドだったりするわけで。
そんな。
この世の、「明日から消えて無くなっても世界は困らないもの」に携わる全ての人に。
そして、それを応援する僕らにも。
春が一刻も早く来ますように。
嘘偽りなく、祈ります。
僕の同級生、広島さんは隣のクラスの人気者。
だけど、僕にだけ訳の分からない事をいいに来るのが玉に瑕。
『・・・肉うどんおごるから、許してよ』
『・・・玉子もつけてよね!!』
広島さん、やっぱりチョロすぎ。