広島さん。

某カープ好きグループにてだらだら書きました。

その七十四。

僕の同級生、広島さんは隣のクラスの人気者。

だけど、僕にだけ訳の分からない事をいいに来るのが玉に瑕。

 

どうも、湯川です。
五月も半ばを過ぎて、嘘か本当かわからないけど、来月にはプロ野球も開幕だとかなんとか、世間がやかましいですね。
とにかく、みんなが笑って納得できる開幕になってほしいものです。

・・・でもさぁ、本当なら。

今月は交流戦で、ZOZOマリンに行くはずだったんだよなぁ(まだ引きずっている)。
広島さんと岩国さんと僕と、初めてのZOZOマリン(楽しげな三人を妄想中)。
楽しかったろうになぁ・・・はぁ~あ(ある意味五月病)。


(と、そこへ湯川くんのスマホに着信)

『(画面を見て)「非通知」?・・・誰だろう・・・(着信に出て)はい』
『もしもし(テレビの匿名インタビューなんかで聞くような加工された声)』
『!?・・・は、はい・・・』
『突然すみません、そちらは(高校名と学年・クラスを告げ)の、湯川くんの携帯ですか?』
『・・・はい、そうですが。そちらは?』
『すみません、訳あって名乗ることは出来ないんです。私のことは、そう、(U)とでも呼んでください』
『・・・はい(正直この人はアレなんじゃないかと思う湯川くん)』
『いきなりで申し訳ありません。正直なところ、アレな人じゃないかって思われてもしょうがないんですけど』
『は、はいっ(やべ、読まれてたっ)』
『真面目なんですね(湯川くんのあわてた返事にクスクス笑う)』
『(少しむっとして)それで、「U」さん。ご用件は何ですか?』
『マリーンズとの交流戦、残念でしたね』
『!?』
カープの応援のために、わざわざ【TEAM26】に入会してまで手に入れたチケットだったのに』
『なんで知ってるんですか、そんな事!?』
『(無視して)それも、お友達の広島鯉子さんのためだなんて、泣かせる話ですね』
『ひ、広島さんだけじゃありません!岩国さんにもチケットはとりました!』
『なぜあわててるんですか?(含み笑い)』
『な、なんで僕があわてるんですか!?』
『(苦笑しつつ)さあ?・・・まぁ、広島鯉子さんには気の毒でした。彼女、残念がってませんでしたか?』
『当たり前です!』
『でしょうねぇ・・・気の毒に』
『でもね、彼女は基本ポジティブな性格だから、大丈夫です』
『そうでしょうね、彼女なら』
『彼女が凹んだのなんて、僕が知ってる限りは二回くらいしかないです』
『ひとつは多分、大瀬良投手の結婚でしょう?もうひとつは・・・何ですか?』
丸選手の移籍です』
『あぁ!さすがにあれは彼女も応えたでしょうねぇ・・・』
『・・・!?(と、ここまで来て気付く湯川くん)あの、(U)さん』
『はい』
『あなたは広島さんのお知り合いですか?』
『いいえ』
『でも、あなたの話し方って、彼女の事を知らない人間のものじゃないですよ?』
『・・・』
『彼女が大瀬良投手の大ファンだって、なんで知ってるんです?』
『ファンどころか、お嫁さんになりたかったんですよね、彼女は』
『そこまで知ってて!・・・いったい、知り合いじゃないなら何なんですか!?』
『そうですね・・・。ずばり云うと、広島鯉子さんとお近づきになりたい人間、です』
『お近づきになりたい!?』
『はい。是非とも』
『それは、いったい、どういう意味なんですか!!』
『ご心配なく。あなたが考えてるような意味じゃありませんから』
『僕が何を考えてるっていうんですか』
『さぁ?』
『・・・あの、ちゃんとした用件じゃないなら、電話、切っていいですか』
『いえいえ、ちゃんとした用件はあります。彼女に伝言をお願いしたいんです』
『直接話せばいいんじゃないですか。お近づきになりたいんでしょう?』
『知らない人間がいきなり話しをするよりも、知ってる人間を通じた方が、人間って聞く耳を持つでしょう?』
『彼女については、それは当てはまらないと思いますよ?』
『誰でも友達になっちゃうんですよね』
『本当によく知ってますね』
稲葉監督とは初対面で仲良くなって、バレンタインにチョコ送ったんですよね』
『そんな事まで・・・(ちょっと怖くなってきた湯川くん)』
『いろいろパイプがあるものですから』
『伝言、伝えないかもしれませんよ』
『それはそれで、仕方がないですね』
『(絶対それはないと思ってるんだ・・・もしかして、僕の事も調べてるのか?)』
『お願いできますか?』
『聞くだけはききます』
『有り難うございます。広島鯉子さんに、こうお伝え下さい。「致し方のない事情とはいえ、マリーンズとの交流戦にお越し戴けなかった事、残念に思ってます。でも、いつか必ず、幕張でお目にかかれる事を信じています。その時は是非お話ししたい事がありますので、宜しくお願いします」・・・以上です』
『・・・あの、(U)さん』
『はい』

『(U)っていうのは、もしかして・・・』
『じゃあ、お願いしましたよ、湯川くん(通話が切られる)』
『え、ちょっと!!もしもし、(U)ってまさか・・・!!』

 

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場面は変わって某所。

簡素な事務室の机の前に。

通話用のヘッドセットを外して、一息ついている人影が。
名探偵コナンの犯人みたいなのをイメージして下さいw)

 

『・・・ま、やるだけのことは、やったか』

(と、その横から奇妙な鳴き声)

『ミャーミャー、ミャア?』
(声をきいて振り向く人影。振り向いた方向には、帽子をかぶったカモメがいる)
『(人影、カモメに向かって)そこまでやる必要があるのかって?』

『ミャア』
『あるからやったんでしょ。まだまだ現役を退くつもりはないけど、後継者を探して育てるのも、大切な役目なんだから』
『・・・ミャア?』
『ずいぶん疑り深いね、マー君(あ、云っちゃったw)。あの明るいキャラクター、大きな声、そして野球に対する愛情。どれをとっても即戦力クラス』
『ミャアミャアミャア』
『うん、「野球に対する愛情」っていうか、「カープに対する愛情」だよね。そこが問題なんだけど。でもね、見てて。いつか必ず、あの子の声が私に代わってここに響き渡る日がくるから』
『ミャア?』
『来る、来ないじゃないの、必ずその日を来させるようにするの』
(人影が明るくなり、その正体が現れる。正体は球界きってのあの有名な女性)
『ミャア・・・!』

『そう、この私、谷保恵美が、広島鯉子を必ずマリンスタジアムの立派なウグイス嬢に育ててみせるわ・・・待っててね、リコちゃん・・・』

 

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僕の同級生、広島さんは隣のクラスの人気者。

だけど、僕にだけ訳の分からない事をいいに来るのが玉に瑕。

 

公式戦・通算1800試合アナウンス担当という記録を持つ、鉄人ウグイス嬢。
千葉ロッテマリーンズの至宝・谷保恵美。

 

その彼女に、自身の後継者として狙われている事を、広島さんはまだ知らない・・・。




で、(U)って(ウグイス)のことだったんですね、谷保さん・・・。