その六十三。
僕の同級生、広島さんは隣のクラスの人気者。
だけど、僕にだけ訳の分からない事をいいに来るのが玉に瑕。
『ねぇ、湯川くん!』
『何、広島さん?』
『やらかしたね、九里さん!!』
『九里さんがあんなピッチングしちゃうから、カープの秘密大作戦がばれちゃうよ!!』
『秘密大作戦?(イヤな予感しかしない湯川くん)』
『そう!名付けて「交流戦で全力使っちゃいました、もうペナントレースは戦えません、他球団がんばってねって思わせてからの四連覇&日本一大作戦」だよ!!』
『どんな作戦?ってきかなくてもいい作戦名だね』
『首脳陣が考えてる事を作戦名にしたよ!』
『あくまで広島さんの想像だよね』
『でも、この完璧な作戦も、九里さんの完封で水の泡・・・。今ごろ他球団は「おいおい、まだやれんじゃんカープさん!!あやうく騙されるところだったぜ」っていってるよ・・・(ため息の広島さん)』
『いや、そうじゃないんじゃないかな?』
『(無視して)カープの大作戦をバらしちゃうから、九里さん。罰としてウィニングボールをスタンドに放り込まれたのね・・・監督の指示で』
『いや、広島さん?』
『アツさんが「九里、このままじゃいっちゃいますね」ってベンチに報告して、野手全員に「九里が完封したら、その時点のウィニングボールは何がどうあっても楽天ファンのスタンドに放り込め」って云う指示が・・・』
『広島さん?』
『ここまでの死んだふり作戦が成功してたのに、これで全部台無しだから、九里さんは即二軍におとされて、二度と上がってこれないんだわ・・・かわいそうな九里さん』
『・・・(もう今日はあきらめた湯川くん)』
僕の同級生、広島さんは隣のクラスの人気者。
だけど、僕にだけ訳の分からない事をいいに来るのが玉に瑕。
試合がない日はろくな事がないよ、まったく。