広島さん。

某カープ好きグループにてだらだら書きました。

その二十三(広島さん『そうかぁマル悲しいけどこれプロ野球なのよねけどそうそうジャイアンツには勝たせないよ前回くらい超長いけど強制着陸しないと怒られるからね』スペシャルその3)

僕の同級生、広島さんはとなりのクラスの人気者。
だけど僕にだけよく分からない事をいいにくるのが玉に瑕。

冷食で何とか肉うどんをでっち上げたが、広島さんはおつゆまで全部飲み干した。

『あー、おいしかった!』
『おそまつ様でした。そんなに喜んでくれて嬉しいよ』
『私、食べ物は全部美味しい主義だから!』
『かなり元通りの広島さんになったね。じゃ、岩国さんに』
『やだ』
『わかったよ・・・話そう、広島さん』
『うん』
『じゃあ、どうぞ』

(しばらくの間、無言の広島さん)

『丸さん、大好きだったから、すごく悲しい』
『見たことない顔だったものね』
『でも今は大好きだったから、すごく腹が立ってるんだ』
『可愛さ余ってだね』
『家族ってなんだろね、湯川くん』
『?』
『家族一丸って何なの?丸さんにとってカープは家族じゃなかったのかな?結局はお金をたくさん貰えるところがいいなんて、信じられない!育ててもらって感謝してるなんて、ウソにしか聞こえないよ!!』
『広島さん』
『湯川くんだってそう思うでしょ!?あの人は家族を裏切った人でなしなのよ!!』
『広島さん』
『大瀬良さん、来年の初戦でぶつけてやれば』
ひろしまさんっっ!!!』
『(めったにない大声に驚いている)』
『丸選手と、カープは、家族じゃない。そのほかの選手にとってもカープは家族じゃないよ。自分が所属しているただの、職業野球チームだ』
『湯川くん・・・』
『彼は仕事として野球をしているんだよ。これまでの環境への愛着と仕事に対する待遇と。ドライなようだけど、彼はプロとして後者を選んだんだ』
『悲しいね』
『そうだね、スレッガーさんじゃないけど「悲しいけどこれプロ野球なのよね」だよ』
『?』
『忘れて。とにかく、そういう事だよ』
『なんかがっかりだな。湯川くんがそんなんだと思ってなかった。何でそんなにドライになれるの!?湯川くん、丸さんがいなくなって悲しくないの?またジャイアンツに大事な選手を持ってかれて、悔しくないの!?これじゃあ、カープってバカみたいじゃない?大事に育てて、持ってかれて。カープジャイアンツのファームじゃないのよ!!』
『(さっきよりも大声で)わかってるよ、そんなの!!』
『ゆかわ、くん・・・』
『悔しくない訳ないだろ!そりゃあさ、カープが弱けりゃ諦めもつくよ。プロだもの、強い、優勝争いができるチームがいいに決まってる。なのに・・・こんなに強くて、こんなにドラマがあって、こんなにも僕が大好きなチームなのに。まさか下位のチーム、しかもよりによって同リーグのあのチームに移籍するなんて、君に云われなくたって、納得なんかどこまでいっても出来るわけないだろ!!』
『湯川くん・・・(怒りに少しおびえてる広島さん)』
『ごめん・・・。実は、僕も丸選手の事は極力考えないようにしてたから。女の子に当たり散らすなんて、最低だね』
『・・・そうね、湯川くん、最低だね』
ひろしま、さん』

(目線が合う二人。何かが通じた一瞬の間の後)

『湯川くん・・・』
『広島さん・・・』

(こらえきれずに、爆笑する二人)

『そうねって、ひどいよぉ~(涙を流しながら)』
『だぁって、そうじゃないぃ~(涙を流しながら)』

(ひとしきり笑って、落ち着く二人)

『広島さん、一つ聞いていい?』
『何?』
『君のご両親が絶対助からない病気になったとします』
『湯川くん!』
『(無視して)で、悲しんでる君の目の前になんか神様か悪魔みたいなやつが現れて、「カープファンをやめたら助けてやる」って云ったらどうする?』
『(笑顔で)そんなの、カープファン続けるにきまってるでしょ!』
『期待を裏切らないね』
『家族って、いいものなのかな?』
『答えは出てるだろ?』
『まあね!(とびっきりの笑顔で)』
『じゃあ、岩国さんに連絡するね』

岩国さんと白井審判及びスライリーとの協議の末、広島さんは岩国さんの家に来たという話にして、彼女を送り届けることにした(当然だね)。

気になる?ご両親とのご対面の場面だが。

岩国さんの話だと、
「美魔女と赤毛の大男が泣きわめきながら彼女をさらっていった」
という感じだったらしい。

なんて一夜だよ、まったく。

僕の同級生、広島さんはとなりのクラスの人気者。
だけど僕にだけよく分からない事をいいにくるのが玉に瑕。

この時の僕はまだ知らない。
月曜日。
洗濯済みの僕のスウェットと。
洗濯済みの僕の母親の下着と。
そして手焼きのクッキーを持って。
僕のいないうちに広島さんが僕の家を訪れることを。
その後しばらく、母親からは『やんちゃさん』、父親からは『ラブコメくん』と呼ばれる羽目になることを。