その十四。

僕の同級生、広島さんはとなりのクラスの人気者。
だけど僕にだけよく分からない事をいいにくるのが玉に瑕。

『湯川くん』
『何？広島さん』
『誠也の背番号が５１から１になったけど、余った５０は誰がつけるの？』
『背番号で算数をするとそういう事になるけど、全然違うよ。ただ、１になったんだよ』
『（ちょっと納得いかない顔）』
『難しく考えない方がいいよ。でも、１っていう事はいよいよ鈴木選手もカープを背負って立つ男になったんだね』
『５０も引かれたのに？』
『算数は忘れようか。背番号の数が少なくなる＝主力選手の証明って考えればいいよ』
『それって何かの公式ね？』
『もうそれでいいよ』
『でも、松山さんは１１も足されて』
『算数は忘れて、広島さん？もともと松山選手は、５５っていう背番号にあこがれていたから、喜んでいるんだよ』
『じゃあ、曽根選手の００はどういう事？あ、わかった！云わないで！！』
『固唾を呑んで待ってるよ』
『０は、マル。それが二つでしょ？丸の二人分頑張れって球団に云われたんだ！！』
『・・・それぐらいの期待を持ってはいるだろうけど』

（広島さんのスマホに着信）

『もしもし。あ、お隣のおばさん・・・えぇ！！ごめん湯川くん、すぐうちに帰らないと！』
『どうしたの？』
『お父さんとお母さんが二階のベランダで「だめぇっ！１番はまだ智徳さんのだからとっちゃいやぁっっ！！」「許さぁんっ！！ブラッドの５５番は誰にも譲らんぞぉっ！！」って泣きながら叫んでるらしいの。じゃあね！（走り去る）』

僕の同級生、広島さんはとなりのクラスの人気者。
だけど僕にだけよく分からない事をいいにくるのが玉に瑕。

広島さんのご両親、体温高いなぁ・・・。